ミラーレスカメラや一眼レフでの撮影に慣れてくると、いろいろな画角で写真を撮りたくなってくるものです。広角レンズや望遠レンズに交換して、バリエーション豊かな写真が撮れるのがレンズ交換カメラの魅力ですよね。しかし、新しいレンズを購入したものの、何本もレンズを持って歩くのが面倒になり使わなくなってしまうというケースが多いようです。そこで今回は、広角も望遠も1本でこなせる高倍率ズームレンズを紹介します。メリット、デメリット、選ぶ際のポイントを詳しく解説しますので、参考にしてください。
高倍率ズームレンズとは?
広角から望遠まで1本でこなせるレンズ
高倍率ズームレンズを一言で表すと「焦点距離の幅が広いレンズ」です。この焦点距離の値が小さい(短い)ほど広い範囲が写り、反対に値が大きい(長い)と写る範囲が狭まり遠くのものまで写せるようになります。この広範囲から遠くの被写体まで写せる撮影領域を併せ持つのが高倍率ズームレンズ。広角から望遠までレンズ1本でカバーできます。
高倍率ズームレンズのメリット
広角も望遠もレンズ1本でカバーできるためにレンズの交換が不要
撮影先でのレンズ交換は、いちいち面倒になることもあります。風が強くホコリが舞う中でのレンズ交換は、センサーに汚れが付いてしまうかもしれません。1本で様々な撮影がこなせる高倍率ズームレンズなら、レンズ交換が不要なので気軽に撮影可能です。
複数のレンズを組み合わせるより軽くて持ち運びやすい
高倍率ズームレンズは、普通のズームレンズと比べて軽いのが大きなメリットです。例えば、ニコンのDXフォーマット対応の高倍率ズームレンズ「18mm~300mm」の重量は550gです。これを普通のズームレンズで補おうとすると焦点距離「18mm~105mm」(420g)と焦点距離「70mm~300mm」(415g)の2本で835gの重さになります。1本で済むため荷物がコンパクトになりますし、軽いので長時間持ち歩いても疲れにくいですね。
高倍率ズームレンズのデメリット
レンズが暗いので手ぶれしやすくボケない
高倍率ズームレンズは構造上光を取り込みにくく、暗いレンズが多くなってしまうので注意が必要です。光を取り込む性能はF値で表し、数字が小さいほど多くの光が取り込めます。標準ズームではF2.8などのモデルもありますが、高倍率ズームレンズはF3.5など暗めのモデルがほとんど。暗い場所では手ブレしやすくなりますので、三脚を使う、壁などを使って体を固定するといったテクニックで対策しましょう。手ブレ機能搭載モデルを選ぶのも手です。またF値が大きいとボケにくいという点もあります。ボケ味を出したいときは、被写体との距離感を調整するなど工夫しましょう。
単焦点レンズに比べて解像度が低く画質が低下する
広い焦点距離をカバーするために、構造上画質は良くないモデルが多いです。ただしこれは、単焦点レンズや普通のズームレンズとくらべてのお話。スマホやコンパクトデジカメと比較すると、断然きれいな写真が撮れます。コンテストに出品する作品を撮影する、など画質を追求しなければ気になることはないでしょう。
高倍率ズームレンズの種類
フルサイズセンサー用(高画質で高価なモデルが多い)
フルサイズセンサーは、現行デジカメのセンサーで一番大きいものになります。センサーが大きいため、レンズの口径も大きくなります。光を取り込みやすいため、F値の小さい明るいレンズを造りやすいのが特徴。ボケやすく一眼らしい写真が撮りやすくなります。
カメラ自体も高画質な高級モデルが多いため、必然的にレンズも画質を追求したものが多くなります。10万円~20万円のラインナップが多く、売れ筋のようです。将来ステップアップを目指すなら、初心者のうちからフルサイズ用レンズを買っておくのがいいでしょう。
APS-Cセンサー用(お手頃価格で画質もそこそこ)
APS-Cセンサーは、上で説明したフルサイズよりもワンサイズ小さなセンサーです。センサーにあわせてコンパクトなカメラボディが多く、レンズもコンパクトなものが多いですね。フルサイズ用よりも持ち運びやすいため、画質にこだわらず移動が多い方におすすめの規格です。
カメラ本体は初心者でも入手しやすいエントリーモデルが多く、レンズも安価なものが揃っています。10万円以下のラインナップが多く、選びやすいです。フルサイズセンサーのレンズはAPS-Cセンサーで使えますが、逆は使えないこともありますのでよく確認しましょう。
ミラーレス用(軽量小型で持ち運びやすい)
軽量コンパクトが売りのミラーレスカメラは、レンズも軽くて持ち運びやすいのが特徴。例えばキャノンの高倍率ズームレンズ「18mm~150mm」は重量が300gしかありません。フルサイズ用やAPS-C用レンズで同等の物を探すと、軽くても500g以上のモデルが多いですね。
使い勝手のよい高倍率ズームレンズは、カメラにつけっぱなしにすることが多く、軽いのは大きなメリットになりますね。最近は画質の良いモデルも多く、プロが撮影の現場でミラーレスカメラとレンズを使用するシーンも増えています。旅行でカメラを使う事が多い方は、バッグの容量を節約できるのでおすすめですよ。
高倍率ズームレンズの選び方
搭載機能で選ぶ
暗い場所の撮影なら手ブレ機能を
前述したように、高倍率ズームレンズはレンズに光が取り込みにくい構造です。そのため、暗い場所ではシャッタースピードを遅くする必要があります。手ブレが発生しやすくなりますので、室内や夜間撮影などが多い方は手ブレ補正機能付きのモデルを選びましょう。特に望遠側では手ブレが発生しやすくなるため、お祭りの花火などでは必須の機能と言えます。
こだわりの作品を撮るならMF搭載モデルを
AF(オートフォーカス)モードでは、画面上のフォーカスポイントのどこかに自動でピントが合います。そのため、ピントを合わせたいポイントが微妙にずれている場合も多々あります。コンテストに出展するなど、こだわりの写真を撮りたい方にはMF(マニュアルフォーカス)搭載レンズがおすすめ。レンズについているフォーカスリングでピントを微調整できるため、思い通りにピントを合わせられます。
撮りたいものに合わせて性能を選ぶ
野鳥撮影なら焦点距離400mm以上
水辺から飛び立つ野鳥など、ダイナミックな動物の姿を撮りたい方は、望遠性能が高いレンズを選びましょう。離れた場所から野鳥を大きく写すためには、焦点距離400mm以上が基本と言われています。撮影状況や被写体にもよりますが、望遠側の焦点距離がなるべく長いレンズを選んでおけば、後悔することも少ないでしょう。ただし、望遠性能が高いレンズは、画像のゆがみも大きくなる傾向があるため、注意しましょう。
建物の外観や室内を広々撮るなら焦点距離30mm以下
美しい建物の外観・内観を広々と写したいなら、広角性能の高いレンズを選ぶのが基本。焦点距離30㎜以下レンズなら、人間の視界よりも広い範囲が写せるため、実際に見た室内よりも広く感じます。街並みや大自然の風景なども、広々としたダイナミックに写せるため、旅行撮影にも最適。一眼レフらしさを感じる写真を撮りやすいため、手軽に印象的な写真を撮りたい方におすすめです。
高倍率ズームレンズのおすすめブランド・メーカー
ニコン
望遠ズームに強いカメラ総合メーカー
もともと軍用光学兵器を造るメーカーだったニコンは、望遠レンズに強いという特徴があります。高倍率ズームレンズも望遠側を広くカバーするモデルが多く、選択肢が多いですね。野鳥撮影などをこなしたい方には、おすすめのメーカーです。
キャノン
ラインナップ豊富な業界最大手
最大手カメラメーカーで、レンズのラインナップも多く選びやすいのがメリット。使いやすい定番モデルから、高倍率でも明るいプロ向けのレンズもラインナップしています。開発力を活かした、高機能レンズが多いので、レベルアップしても付き合っていけるメーカーですね。
ソニー
独自技術満載のオリジナルレンズ
総合家電メーカーで、どの家電にも独自技術を盛り込むのが特徴のメーカー。レンズにも独自のコーティング技術を投入するなど、他社にない製品をラインナップしています。100mm~400mmと望遠側に強い高倍率レンズも多く、動物撮影などで頼もしいですね。
シグマ
安くて高画質なサードパーティーレンズ
もとは他社カメラ用のサードパーティーレンズを製造するメーカーでしたが、現在はカメラ本体も造っています。純正レンズを超える性能のモデルも発売しており、安さだけでなく、画質を求めるユーザーからも人気を集めています。
タムロン
高倍率ズームレンズの生みの親
シグマと同じく、サードパーティーレンズ専門メーカーです。ズームレンズに強いメーカーで、世界で初めて高倍率ズームレンズを造ったと言われています。小型軽量で安価なレンズが多いことから、初心者におすすめされることも多いですね。
おすすめ&人気の高倍率ズームレンズランキング
ニコンでおすすめの高倍率ズームレンズ
ニコン-AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR(79,180円)
広角から望遠まで1本でしっかりカバー
フルサイズ換算で27mmの広角から450㎜の望遠までカバーするレンズです。ズーム倍率はなんと16.7倍。広い撮影範囲はそのままに、前モデルから全長は21㎜短くなり、280gの軽量化を果たしています。550gと非常に軽量なため、常にカメラにつけておいても負担になりませんね。
暗い場所で有利な手ブレ補正機構も搭載しており、夜間でも多くのシーンで手持ち撮影ができます。明るい場所でも、望遠側はブレやすいため、うれしい機能ですね。非球面レンズという特殊なレンズを使っていて、望遠側の画像が歪むのを防止します。1本で何でもこなせる万能選手ですから、最初の1本に選ぶのがいいでしょう。
シグマ-18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO ニコン用(52,498円)
携行性と画質の両立を目指したレンズ
サードパーティーレンズとして安い価格を実現しながら、画質にもこだわったお買い得レンズです。広い画角、手ブレ補正など純正レンズと同じスペックながらも、手に入れやすい価格なため、カメラを買ったばかりの初心者の方におすすめですね。
FLDガラスという特殊なガラスをレンズに使用しており、逆光のような光の強いシーンでもくっきりしたシャープな写真を撮ることができます。手ブレ補正もしっかりついているので、どのようなシーンでも安定した写真を撮ることができますね。
タムロン-18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD ニコン用(66,833円)
世界初の22倍高倍率ズーム
フルサイズ換算で27mmから620mmをカバーする超高倍率ズームレンズ。広角から超望遠域まで1本でこなすことができます。普段の撮影シーンであれば、撮りたい画角をほとんどカバーできるでしょう。旅行などで荷物を減らしたいときに最適な1本です。
簡易防滴機構を搭載しているのも、屋外使用するにはありがたいポイント。タムロン独自の手ブレ補正機構“VC”も搭載されており、撮影場所、時間を問いません。これだけの高性能レンズながら、手に入れやすい価格に抑えているのも魅力的ですね。
キャノンでおすすめの高倍率ズームレンズ
タムロン-18-200mm F3.5-6.3 キャノン用(18,137円)
気軽に持ち出せる軽量な高倍率ズームレンズ
フルサイズ換算で27mm~310mm相当と、普段使いしやすいズームレンズです。室内、風景、動物、集合写真などほとんどの撮影シーンをカバーすることができるでしょう。手ブレ補正機能もついているので、結婚式や誕生日会など、暗い室内での撮影もこなせます。
これだけの性能と機能を搭載しながら、400gという軽さですから持ち歩くのも全く苦になりません。高倍率ズームながら、2万円を切る価格というのも驚きです。カメラとセットの標準レンズでは物足りなくなってきた方の、最初の1本にピッタリですね。
キャノン-EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(52,910円)
高速AFでシャッターチャンスを逃さない
300mmの望遠までカバーしながら、広角側は70mmと使いやすく、普段使いもできる望遠ズームレンズです。USMという上位機種に搭載される超音波モーターを採用し、スピーディーなAF性能が評判です。動画撮影時にも、なめらかなピント合わせが可能で、ブレのない動画撮影にも定評がありますね。
フルタイムマニュアルモードを搭載し、面倒なモード切替えを行わずに、フォーカスリングを回転させるだけでマニュアル操作が可能。素早いAFでおよそのピントを合わせ、微調整を行うことができます。飛行機撮影など、一瞬のシャッターチャンスを逃したくない撮影に向いているレンズですね。
シグマ-150-600mm F5-6.3 DG OS HSM(97,550円)
スポーツや野鳥撮影に最適な超望遠ズーム
150mmの中望遠から600㎜の超望遠まで望遠域を全てカバーしている1本です。AF中に、ピストンリングを操作するだけでMFモードに切り替えられる機能を搭載しています。動きのあるものに素早くピントを合わせることができるため、レースやスポーツの撮影にピッタリ。
三脚を取り付ける台座が外せるようになっていて、撮影が終わった後持ち運びやすいようになっています。スポーツ会場など混みあう場所での移動にも邪魔になりませんね。広い焦点距離をカバーしているので、望遠レンズで悩んだらこのレンズを選んでおけば間違いないでしょう。
オリンパスでおすすめの高倍率ズームレンズ
オリンパス-M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7(44,614円)
手軽に持ち出せる423gの超望遠ズーム
フルサイズ換算600mm相当の超望遠域までカバーしながら、500gを切る驚きの軽量レンズです。フルサイズやAPS-C用レンズだと1500gを超えるものがほとんどですから、1/3以下の重量になりますね。望遠レンズが欲しいけど、持ち運びづらさにしり込みしている方におすすめです。
手ブレ補正機能が付いていないため、手ブレ補正機能が付いたカメラを選ぶか、三脚を使用しましょう。望遠は特に手ブレしやすいため、対策が必要です。レンズがコンパクトな分、三脚を持ち運ぶのも楽ちんですね。動物、スポーツなど、望遠レンズならではの写真を気軽に撮影しちゃいましょう。
オリンパス-M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6II(59,270円)
軽量コンパクトながら、幅広い画角をカバー
マイクロフォーサーズという小さなセンサーを採用するオリンパスの高倍率ズームレンズ。フルサイズ換算で28mmから300㎜と広範囲をカバーし、超望遠以外はどんな撮影もこなせます。防滴防塵機能も搭載し、屋外でのハードな撮影でも安心ですね。
10倍以上の高倍率ズームながら、285gと超軽量に収まっているのは驚きの一言。気軽に持ち出して、街角スナップなどこなしたい人にはぴったりです。最短撮影距離33cmとかなり近くまで寄れるので、グルメやおしゃれな雑貨などもキレイに写せますよ。
オリンパス-M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(124,876円)
強力手ブレ補正でどんなシーンにも対応
オリンパスの高性能レンズ群“PRO”シリーズの高倍率ズームレンズです。フルサイズ換算で24mm~200mmと非常に使いやすい画角をカバーしています。最小F値が全域でF4となっており、画角を変えてもボケ味を統一することができます。
“5軸シンクロ手ブレ補正”を搭載し、6.5段分の補正性能を搭載しています。これは、暗い場所でも6.5段階シャッタースピードを速くすることができるということです。夜間の手持ち撮影も気軽に行えますね。値段は少し張りますが、1本で何でもこなしたい方にはピッタリのレンズです。
ソニーでおすすめの高倍率ズームレンズ
ソニー-E 18-135mm F3.5-5.6 OSS(62,510円)
機動力が強みの使いやすい高倍率ズームレンズ
フルサイズ換算で広角27mmから中望遠200mm相当をカバーします。日常域で使いやすい焦点距離をほとんどカバーしながら、325gとかなりの軽量レンズに仕上がっています。軽量ながら、手ブレ補正機能もしっかり搭載しているのはうれしいポイントですね。
リニアモーターという精密なモーターを採用し、静かで素早いピント合わせが可能。シャッターチャンスを逃しません。最短撮影距離も45cmとまずまずの性能で、近接撮影から望遠までオールラウンドにこなすことができます。初めて訪れる場所など、どんなレンズが必要かわからない場所に持っていきたいですね。
ソニー-FE 24-240mm F3.5-6.3 OSS(123,330円)
幅広い画角で高画質な写真を
ソニー初のフルサイズ対応高倍率ズームレンズで、24mmから240mmまで、欲しい画角をしっかりカバーします。光学式手ブレ補正機能を搭載しているので、カメラ本体に手ブレ補正機能が無くても安心して使うことができますね。防塵防滴機能も搭載と、スキがありません。
フルサイズセンサーにあわせた大きな口径のレンズは、広角側から望遠側まで鮮明に描写します。光の異常分散を軽減するEDガラスをレンズに使用し、くっきりした像を結ぶことが可能。これにより、くっきりした美しい写真を撮影できます。画質にこだわりたい方におすすめしたい1本。
タムロン-18-300mm F/3.5-6.3 DiIII-A VC VXD ソニーEマウント用 (75,000円)
16.6倍のズーム比を実現した高倍率ズームレンズ
ソニーのEマウントに対応した、高性能な高倍率ズームレンズです。APS-Cサイズのミラーレス用レンズの中では、最高クラスの16.6倍のズーム比を実現しています。スナップ写真や風景の撮影はもちろん、スポーツや動物もより鮮明に写せるようになっていますよ。
高倍率ながらも15cmの最短撮影距離、1:2の最大撮影倍率を実現しているのも特徴です。近くの被写体を撮影する性能も抜群なので、近くの被写体を写しつつ、背景も取り入れるワイドマクロ風の撮影も楽しめます。高性能な手ブレ補正機構、高速で高精度なAF機構も搭載した、幅広く使える高倍率ズームレンズです。
まとめ
撮りたいシーンに適した焦点距離のレンズを選ぼう
撮影シーンによって欲しい焦点距離は異なります。高倍率ズームレンズは多くの撮影シーンをカバーできるのが特徴ですが、超広角と超望遠域は同時にカバーできません。自分はどんなシーンでの撮影が多いのか、どんな写真が撮りたいのかをよく検討し、欲しい画角をカバーするレンズを選びましょう。